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2013年5月3日金曜日

オルド自由主義についてのメモ1

概説

オルド自由主義は、新自由主義(ネオリベラリズム)の源流の一つとして知られる、20世紀のドイツで発展した経済思想だ。そこにおいて提唱された経済政策は、戦後西ドイツの復興に寄与したことで知られる。もともとヴァルター・オイケン(1891 - 1950)が学術雑誌「オルド」の創刊に関わったこと、また「秩序政策 Ordnungspolitik」という政策手段を通じた国家による市場介入によって,競争秩序の実現をはかり,ひいては個人の政治的・経済的自由を実現しようとしたによって、”オルド”自由主義の名前を冠している。

戦後ドイツの経済政策の主導的原理を「社会的市場経済 Soziale Marktwirtschaft」といい、リスボン条約(EU 条約)第3条3項でもこの「社会的市場経済」が EU の目的の ひとつとして条約上に明記されたことから、注目を寄せている向きがあるようだ。オルド自由主義が形成されたのは1930年代のフライブルク大学で、フッサールの影響も受けているという。

戦後西ドイツにおいて、アルフレート・ミューラー=アルマックやルートヴィヒ・エアハルトらがオルド自由主義に強く影響を受けた社会市場経済という概念を打ち出し、具体的にはコンツェルン解体と反カルテル政策を柱とする競争制限禁止法がようやく最終的に連邦法として制定した。

方法論的な特徴

  • 純粋数理モデルアプローチと歴史的アプローチ、とくに発展段階論と経済様式による分析に対する徹底的な批判を行い、結論的に、方法論としての「経済秩序」に対する規範的分析を中心に据えるべきであるとする。
  • 日常における経済現実を正確に観察することから経済学的な主要問題を生成すべきとする
  • 市場経済システムのなかの経済権力間の関係性を解明できる一般的な経済理論


なにやらエスノメソドロジーぽい人たちですねw

主要概念

経済権力

オイケンは、日常的に展開される経済を観察することで、資本主義経済といわれる領域は、自由な競争が行われている自由市場ではなく、”自らの権益を守ろうとして市場を支配しようとするにとどまらず,場合によっては自己の利益を図るために国家に干渉するような私的な「経済権力グループ」の存在”を見出した。

”資本主義”概念批判

「資本主義がなにかという問は”物格化され,対象化され,あるいは人格化されている”ので、既存の経済学は現実の研究から逃避してしまっている。観察者は実現された市場形態を研究すべき」とする。また、「資本主義の概念は、経済の秩序構造に関してなんら確実なものを表明するものでないから,したがって経済的現実態を表示するには適当ではない。各人は、自分だけに都合のよい秩序概念を、資本主義の中に盛り込む」。
このようにオイケンはは近代経済の秩序構造を表示しないゆえに,理論的分析の基礎として適当ではないとしている。

マルクス批判

所有権から考察をするマルクスを批判し、経済形態を中央管理型経済と自由市場経済(市場経済)に分類し、生産手段を社会的に所有しても問題は残るとした。つまり社会問題は所有ではなく、経済過程の制御をどのようにするのかという観点からマルクスを批判した。

中央管理経済批判

(1)中央機関が十分な経済計算を実施することができない(2)そのため生産の調整はできるが、経済計算ができないために需要と供給の計算がうまくいかない。(3)その結果人間のもつ自由が消え去り,奴隷国家になってしまう。

自由放任主義批判

自由放任経済は、結局自由な競争というより、さまざまな連合によって、競争が阻害され、カルテルやコンツェルンによるおびただしい独占・寡占をもたらす。それは1932年以後のアメリカとドイツの経済史が示したように,「自由な市場」の失敗から中央管理経済への傾倒が生じた。

参考文献

  • 黒川洋行(2010) ヴァルター・オイケンとオルド自由主義の経済政策, 経済系 : 関東学院大学経済学会研究論集 249(-), 36-55, 2011-10 関東学院大学経済研究所 cinii

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